艸居

展覧会 exhibitions

「from Art to Wearing Art」平石 裕

2015年3月13日(金)~3月23日(月)

作家在廊日 : 3月13・14・16・17日(いずれも午後) 
シックなプライマリーアート
          日夏 露彦(ひなつ つゆひこ)/ 国際美術評論家連盟aica会員
 白い展示空間に赤い花びらを想わせる造形ユニットが、大小乱れ舞うようにインスタレーションされている。しかし、川面を蛇行する花筏の趣もあり、自然の息吹も覚えるといっていい。 近づいて見ると、赤いユニットは実はスチール材を微妙にずらした三層からなり、すべて2ミリあまりの厚みをもっているから、遠見で見た軽やかさは見事に裏切られる。 軽やかに見えながら重さを持つユニットの群舞―この鮮やかな対照性による表現力は長年育んだシックなエスプリあってこそだろう。
 平石のスタートは、飾り気を捨てたいずれもプライマリーな素材・モノクローム・構成からなっていた。重い鋳鉄角材状ユニットを無彩色で何本かを床に規則正しく並べるだけのものだった。明らかに70年代現代美術にカウンタートレンドとして広まったミニマルアートに洗礼を受けている。情報過剰表現をストイックなまでに切り捨て、壮快なエスプリを自立させた思潮だ。
 平石はその後もプライマリーな構想を一貫して展開。やがて展示壁に鮮やかな単色とスリムなスチール構成体をダイナミックに取り付けることに。光と影の視覚効果も意図したから、シックなエスプリが際立つようになる。そして野外環境、建築への設置が試みられ、やがてはミニマム化して身に着けることにも着眼するのだが、通俗な装飾へのカウンターアピールともいえる。
 ニューヨークで“Contemporary Jewelry”と評価されるのはこのエスプリにほかならない。アートと装飾の両立を空間のみならずジュエリーにも目指す、けだしシックなプライマリーアートの新たな展開を迎えている。

展示風景

PAGETOP